さて、 前回にペプチド合成からキャリア蛋白結合までをお話しいたしましたが、今回からは本職の免疫に入ります。免疫開始は平成13年7月4日(水)。過去の実績がある ベーシックプランで、免疫計画を立てました。その他に10日間隔で免疫を行う場合や、免疫方法、免疫部位等様々ですが、ペプチド抗原の場合このプランが最適のようです。 |
免疫動物選び |
今回の動物種はウサギと決めていたのですが……、一口にウサギと言ってもTKCでは以下の2種類のウサギが手に入ります。この内のどちらが抗体価が上がる と言うような、論争はさておき……、体型が大きく、耳の大きい日本白色種ウサギで行くことにしました。TKCでも一般によく使用されているウサギです。 |
・日本白色種ウサギ (Japanese White)
・ニュージーランドホワイト (NZW)
余談ですが、長年ヤギ・ウサギの飼育販売を手がけているイノウエの 方に、ウサギについて伺ってみたのですが……、ここだけの話、抗体価が良く上がりそうなウサギは他のウサギと区別が付くそうです。でも、ごくまれにしか現 れないので、それらだけを供給することは難しいようです。残念ながら、今回その様なウサギには巡り会えず使用する機会が無かったのですが、もし今度現れた らご報告しようと思います。 |
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試採血(正常血清) (7/4 , Wed) |
まず、免疫前の血清を採取しておきます。これは、後々ELISAやウェスタンブロット等を行う場合のコントロールとして用います。血清量で1mLもあれ ば、大抵のコントロールとしては使用可能ですので、ウサギ耳介静脈から約2mLの血液を採取します。それを室温で数時間静置し、その後冷蔵庫へ……、翌日 遠心し血清を分取します。 |
初回免疫 (7/4 , Wed) |
さて、試採血も終了し次は免疫開始です。抗原は前回作製したKLH-Peptideで、 それらをFreund's Complete Adjuvantと等量混合し、エマルジョンを作製します。これを、ウサギ背皮内数十ヶ所に投与していきます。毎回、この様な方法で抗原を投与していきま すが、2回目以降はFreund's Incomplete Adjuvantを用います。 |
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1回目試採血 (7/11 , Wed) |
通常のベーシックプランでは、この時点での試採血はございませんが、今回だけこのコラムの為に免疫後約7日目の血清を採取していきます。これ以降も、順次抗体価の推移を追っていくために免疫後7日目の血清を採取していきます。 |
・どうして免疫後7日目の血清なの?
この様な疑問をお持ちの方もいるかと思いますが、以前抗体作製の折りに、様々な抗原に対する抗体価の上昇データを集めたことが有るのですが、その時に一番 抗体価が安定して上昇している期間として追加免疫後7〜10日と言うようなデータが得られているからです。しかし、全てがこの期間に当てはまるとは、言い 切れませんのでご注意下さい。 |
2回目免疫 (7/18 , Wed) |
KLH-PeptideとFreund' Incomplete Adjuvantを等量混合し、エマルジョンを作製。初回免疫の部位とは違う部位に投与していきます。方法は初回と同様に背皮内、数十〜数百ヶ所に投与します。 |
・アジュバントの、CompleteとIncompleteの違いは?
CompleteとIncompleteの違いは、 Mycobacterium butyricum がアジュバントに含まれているか否かの違いになります。含まれているのがComplete、含まれてないのがIncompleteです。主に初回免疫には Complete、2回目以降にはIncompleteを用います。初回免疫にはマクロファージ等を活性化させる為に Mycobacterium butyricum が役立つようです。しかし、Completeアジュバントの多用は避けた方が良いようです。 |
2回目試採血(7/25 , Wed) |
そろそろ、一次応答型抗体から二次応答型抗体へと変わってくる頃でしょうか? |
・一次応答型抗体から二次応答型抗体って?
初回免疫の後、生体内では異物が入ってきたことに対し、一次応答型の抗体を産生します。これには、IgMが大量に含まれます。また、2回目以降の免疫では二次応答型の抗体、すなわちIgGが優位に産生されてきます。 |
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ELISA |
さて、ここまでに3回分の血清が手に入りました。そろそろ、ELISAを行ってみましょう。ここで用いる抗原はキャリア結合させていないペプチドのみで、 それをプレートに結合して反応を見ています。KLHをつけた状態では、KLHに対する抗体も測定することになってしまいますから……。 |
・ELISAって?
ELISAとはEnzyme-Linked ImmunoSorbent Assayの略で、抗体価を決める際に良く用いられる手法です。方法として96ウェルプレートに抗原を固定し、その抗原に抗血清、酵素標識二次抗体、基質 の順で反応させ、どの程度、抗血清中に抗原に結合する抗体が存在するのかを調べます。発色が強いほど、抗原と反応する抗体が多いと言うことになりま す。(正確には抗体の数だけに比例するわけでは有りません) |
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ELISA結果の写真をそのまま載せてもわかりにくいので上の様なグラフにしてみました。上図はペプチド-1の血清。下図はペプチド-2の血清のグラフです。縦軸は492nmの吸収、横軸は血清の希釈倍率で1,000倍から倍々希釈になっています。
結果として、ペプチド-1, -2共に抗体価は上がってきているようです。しかし、欲張りな(?)TKCスタッフは更に抗体価を上げようと、3回目、4回目と免疫を行います。もちろ ん、今のままでも使用可能な抗体のはずですが、抗体を安定して使用するには最低でも4回の免疫が必要と言われております。また、1ヶ月後に続編をアップい たしますのでご期待下さい。 |
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