ポリクローナル抗体・モノクローナル抗体の受託作製ならティー・ケー・クラフト。
抗体精製・標識、抗原カラム作製、腹水作製、細胞培養、各種動物血清も扱っております。

受託・製品サービス
Q & A
会社概要
お問い合わせ
Column 
  第1回
  第2回 
  第3回
  第4回
Link
Site Map



Column

第2回 抗ペプチド抗体作製(抗原篇)

最近、合成ペプチドを抗原としてポリクローナル抗体を作製する機会が増えてきました。でも、実際にペプチドを抗原として行った場合、ネイティブ蛋白との反 応性はあるのか? 配列のどの部位を抗原として選択すればよいのか? 等々、様々な問題に直面してしまいます。今回、TKCスタッフが実際にペプチドを抗 原としてウサギポリクローナル抗体を作製する機会がございましたので、その作製状況をリアルタイム連載でお知らせしていきます。
ペプチドをどの様に選択するか?

今回2種類のペプチド抗体を作製するため、他の動物種とのホモロジーが少ない部位に重点を置いて選び出した配列が以下の2種類です。しかし、このままでは抗原として用いるには長すぎるので、抗原性の強い部位(10塩基前後)を選択します。

1. DRATIANMCPEYGATDEIQAVERQY
2. IQNAPNPGGGDLQKAGKLSPLKVQPKKLPCRGQTTCRGSC-
  DSGELSRNSGTFSSQIENTPVLCPFHLQPVPEPETVI

抗原性チェックとして、以下の5項目について検討してみました。
  1. Hydrophilicity
  2. Surface Probability
  3. Flexibility
  4. Antigenic Index
  5. Secondary Structure
詳細については、ここでは省略いたしますが……、その結果、以下の配列が抗原として相応しいと思われました。また、キャリア蛋白の結合に使用するために、C末にCysを加えておきます。
・ペプチド1……DEIQAVERQY(C) (上記配列1:16-25番目)
・ペプチド2……KVQPKKLP(C) (上記配列2:22-29番目)

キャリア蛋白
いよいよ、抗原となるペプチド部位も決定し、免疫を開始出来るか……、と思われましたが、このままでは分子量が小さすぎます。免疫を行っても体が異物と認 識してくれないでしょう。そのため、一般にキャリア蛋白と呼ばれている巨大な蛋白質を結合しなければなりません。通常キャリア蛋白として用いられるのは以 下のような蛋白質があります。
・BSA (Bovine Serum Albumin)
・OVA (Ovalbumin)
・KLH (Keyhole Limpet Hemocyanin)
今回、選択した蛋白はKLHにしました。その理由として……、在庫が豊富にあったから(?)……、と言うわけではなく、以下のような理由が上げられます。
・過去の抗体作製実績がもっとも良い
・BSAはウェスタンブロット等のブロッキング剤として用いられることがあるので、後々邪魔になる?
・分子量が300万〜750万Daと大きく、認識されやすい
・etc...
キャリアーコンジュゲーション
抗原配列もキャリア蛋白も決まりました。後はこの二つを結合するだけです。どういった方法があるのでしょう?
・カルボジイミド法
・グルタルアルデヒド法
・ジアゾ縮合法
・MBS法
・etc...
今回はMBS法で行くことにします。その為にCysを加えたのですから……。実際にどの方法が抗体作製に向いているのかはここでは明言いたしませんが、 TKCスタッフの間ではMBS法が好まれて用いられているようです。あまり、堅苦しいことはこのページには書きたくないのですが……。MBSってなんなん だっ? って方のために簡単な説明を付け加えておきます。
MBS法とは?
MBS(マ レイミドベンゾイルオキシコハク酸イミド)法、かなり長く覚え難い名称です。だから略すのでしょうが……。MBS型架橋剤という物質を用い、蛋白のアミノ 基とペプチドのSH基を結合する方法です。 代表的なMBS型架橋剤であるGMBSの構造を示しましたが、結合するための手を2本持っています。もちろん、それぞれの手はアミノ基とSH基とだけに結 合するようにできています。したがって、重合体を形成するような方法と違って、スマートに結合が行われます。

いよいよ、抗原が出来ました。次回より免疫を開始いたします。もちろん、この様な連載を行うのですから1回免疫後から経時的にELISAを実施し、抗体価 の上がり具合をこのコーナーで掲載していくつもりです。抗体価が得られた場合、ウェスタンブロットまで行いたいと思っておりますので、ご期待下さい。